前回に引き続き、コネクタの選定です。今回からインサートの選定について説明します。
インサート選定の手順
インサートは電気接続を行う重要なパーツです。下記の手順で選定していきます。少し手間ですが、最適な商品を選定するために頑張りましょう!
STEP 1 コネクタタイプの選定
まず、コネクタタイプの選定ですが、角型コネクタのインサートは大きく分けて2種類あります。
汎用タイプかモジュラータイプです。
モジュラータイプはレゴブロックみたいに組合が出来ます。
どうやって使い分けるんでしょうか?
比較表にあるように、モジュラーは電気信号だけでなく空圧など様々な信号を扱えて便利ですが、フレームなどの部品が増えるので、コストや組み立ての手間は汎用タイプに比べて多くなります。基本的に1種類の信号は汎用、複合した信号はモジュラーという感じです。
STEP 2 電気仕様・結線方法の選定
次に電気仕様・結線方法ですが、コネクタの基本とも言える部分なので、しっかりと押さえておきましょう。
下記はコネクタについて学ぼう⑥でも紹介したコネクタの仕様書の一例です。
これを元に解説します。
極数については、その名の通り接続できる最大の電線数を表しますので、用途に合わせて選べば良いのですが、電流と電圧については、少し注意が必要です。
まず、電流についてです。仕様書上は10Aと記載されていますが、使用する環境によって実際に流せる限界電流は大きく変わります。前回紹介した角型コネクタカタログ・サンプルの左下にある表を見てください。
この表はディレーティング曲線といって、インサートの電流仕様を検討するのに欠かせないものです。縦軸が限界電流値、横軸が周囲温度、そこに使用する電線の太さ毎の数種類のカーブが描かれています。
たとえば、このインサートの定格電流は10Aですが、2.5mm²のケーブルを使っていれば、60℃の環境で約15Aを流すことができます。逆に同じ60℃でも1.0mm²のケーブルだと約10Aが限界です。また、1.0mm²で温度が100℃になると6Aしか流せません。
つまり、電線は太いほど電流が流せて、周囲温度が高くなるほど電流が流せなくなるんですね。どうしてそんなことが起こるんでしょうか?
答えは、インサートの限界電流は電線の温度で決定されるからです。インサートは絶縁樹脂なので、耐熱温度は金属の電線より低くなっています。一般的なインサートの耐熱は125℃前後で、それを超えると溶けたり、場合によっては発火する可能性があります。
電線の太さによる違いは導体抵抗値で、細い線ほど導体抵抗が高い=同一電流でも発熱が大きくなります。ちなみに、ディレーティング曲線は全ての極に最大電流を流した限界値に20%のマージンを加えているので、ある安全を見た設計値となっています。
つまり、うまく温度環境と電線の太さを組み合わせれば、定格よりも高い限界電流に対応できる!オトクですね!
一般的にコネクタのサイズは定格電流によって決まるので、条件によっては一回り小さいコネクタも使えます。このあたり、まだまだノウハウがあうので次の機会に説明します。
次に電圧についてですが、使用する環境なども含めて少し複雑なので、次回詳しく説明します。
次回は角型コネクタの選定③ インサートの選定(その2)について解説します。
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