コネクタを学ぼう⑮ 耐環境性について 〜屋外編〜

角型コネクタは生産現場や鉄道など厳しい環境で使用することを想定された製品ですが、一言に耐環境性といっても、環境温度・湿度・化学薬品・振動・油・スパッタなど様々です。
様々なシーンに最適なコネクタ選定方法について学んでいきましょう。

屋外での用途

今回は屋外でのコネクタの活用について解説します。
屋外でコネクタを使用する場合には、主に下記の点に注意が必要です。
・温度環境
・太陽光
・風雨
・塩害
温度環境は前回解説しましたので割愛します。

太陽光

<太陽光による樹脂の劣化>
屋外に放置したプラスチック(樹脂)がボロボロになっているのを見たことがある方は多いと思います。
この樹脂の劣化は紫外線が樹脂間の結合を分断することで劣化していきます。
イルメコネクタにもたくさんの樹脂が使われていますが、太陽光にさらされるのは、一部パーツで下記のようになります。
プラスチック素材辞典様を参考に作成)

よく使われているポリアミド(PA、ナイロン)について見てみましょう。
”ポリアミド”という言葉が示している通り、アミド結合によりモノマー(樹脂の最小単位)が連続して結合して高分子を構成しているものです。
化学のグルメ様を参考に作成)


アミド結合はアミンとカルボン酸が脱水して結合します。
劣化のメカニズムは、紫外線によってC-Nの結合が切断され周囲の水分を吸収(加水)することで分解されます。
したがって、強い紫外線や周囲に水分があること、また温度が高いと反応が加速されます。
海辺のプラスチックがボロボロになりやすいのはイメージしやすいと思います。

次に塗装に使われているエポキシポリエステル粉体塗装についても見てみましょう。
(エポキシポリエステル粉体塗装のエンクロージャ)

この塗装はエポキシ樹脂とポリエステル樹脂の粉体をアルミの表面に吹き付け、加熱することで架橋反応で定着させます。低温で加工ができ、経済性に優れていますが、耐候性については若干劣ります。ポリアミドと同様に紫外線で劣化しますが、もともと粉体だったものが劣化するためチョーキングという現象が発生します。

<太陽光による樹脂の劣化対策>
上述の通り、紫外線強度や水分、温度によって寿命は異なりますが、長期に屋外で使用する用途の場合は基本的に金属部品を選択するのがベターです。
塗装に関しても、耐候性の高いエポキシ粉体塗装の商品を選択しましょう。(エポキシ粉体塗装のエンクロージャ)

風雨

<風雨に対する防水および防塵>
イルメコネクタは標準品で保護等級IP65/66/69に対応し、IP67やIP68タイプも用意しています。

基本的には使用環境に必要な保護等級に適合した商品を選定します。しかし、屋外の場合には少し考慮が必要です。
・水滴や波による高い水圧
・砂塵や雹(ひょう)のような固形物による衝撃

少し極端ですが、上の写真のように波による水の影響はガスケット部への水圧による侵入のみならず、エンクロージャ全体に衝撃が与えられることで、レバーで押さえつけられていたガスケットに隙間が空いてしまう可能性があります。
ガスケット隙間(レバーを外して故意に作っています)

<風雨に対する防水および防塵対策>
対策としては、より保護性能の高い商品を選択するのが基本ですが、保護性能とコストは比例関係にありますので、経済的にバランスの良い商品を選択しましょう。

塩害

すこしややこしいですが、太陽光・風雨については樹脂よりも金属をオススメしていましたが、塩害では逆に金属が影響を受けてしまいます。
海水にさらされる環境で使用する場合は十分な注意が必要です。

<塩水による金属の腐食>
イルメコネクタの標準品ではレバーがステンレス、本体がアルミでできています。
塩水にステンレスとアルミが接触した状態で放置すると、アルミが腐食してしまいます。腐食が進むとステンレスレバーの固定が不安定になるため、防水性を損なう可能性があります。

<腐食のメカニズム>
金属にはイオン化傾向というのがあります。これは単一金属が水中で金属結合が外れて金属イオンとして分離しやすさを表したものです。

ここで、アルミニウムやステンレスは基本的に腐食(サビ)しにくい材質です。ちなみにアルミニウムは白サビがでます。ステンレスは鉄とクロムの合金なので、サビますが酸化クロムがコーティングするためにサビが進行しない金属です。
しかしながら、塩水にさらされて異種金属であるアルミとステンレスが接触している環境は下記の理由で非常に腐食が進みやすくなります。

ー異種金属接触腐食ー
異種金属接触腐食とは、2種類の違う金属が接触したときに標準電極電位が低い金属(卑金属)から高い金属(貴金属)に電子が移動=酸化することによって発生する腐食です。

異種金属接触腐食のイメージ(WIKIPEDIAより)

さらに、上図にあるように電解液である塩水によって加速されます。
つまり、下記の化学式でいうと酸化が異種金属接触によって加速され、還元が電解液である塩水によって加速されているということです。

ここで、還元反応を見ると必要なのは”酸素”と”水”になります。海水の塩分で電導度が高まり、イオン電流の流れが強くなる=還元が加速するというメカニズムですが、非常に面白いのはこの速度が最大化するのが3%、つまり海の塩分濃度程度であるそうです。理由は塩分濃度が高くなると電導度が上がるものの、必要となる酸素濃度が下がるからだそうです。

さらに、海水の塩というのは厄介な存在で、通常の塩化ナトリウム以外に、塩化マグネシウムという潮解性(空気中の水分を取り込んで自発的に水溶液になる材質)の塩も含まれます。つまり、見た目が乾燥した状態でも自発的に”水”を集め、周囲にある豊富な”酸素”をつかってどんどん腐食が進みます。

余談ですが、海水につかった金属は乾いても錆びる可能性がありますので、しっかりと真水で洗って乾燥させる必要があります。

<塩害による腐食対策>
イルメでは、アルミ表面をプラズマを使った特殊な下地に塗装を施すことで、高い強度と耐腐食性を実現したエンクロージャE-Xtreme®を開発しました。
EN ISO 9227:2012 塩水噴霧試験に3000時間以上をクリアした業界で最も塩害に強いエンクロージャです。

ちなみに、太陽光が当たらないという条件であれば、樹脂タイプを使用する方法もあります。船や海上風力設備の内部などでは樹脂タイプも選択肢となります。

まとめ

今回は屋外でコネクタを使用する場合のポイントを解説いたしました。
  – 太陽光(紫外線)が強く、温度が高い環境では樹脂タイプは不向き
  – 屋外では波による水圧や固形物の影響を慎重に検討する
  – 海水がかかる環境では金属の腐食が加速する

イルメではお客様の環境に合わせた最適な商品のご提案を行っていますので、ぜひお問い合わせください。

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