コネクタとアース①

コネクタを学ぼう⑪ アースについて

電気配線において、安全性や安定性を確保するためにアースは非常に重要な役割をもっています。今回はアース(接地)について深堀りしてみます。

アース(接地)について

アース(接地)とは、本来は名前(earth)の通り大地に回路を接続することを表します。アース=0Vと理解されている人も多いと思いますが、正しく理解するためには”電位””電圧”について整理する必要があります。
上図のように、一般的な筒型電池の”電圧”は1.5Vです。ところが、この1.5Vというのはプラス極とマイナス極の”電位の差”を表しているだけで、例えばマイナス極が100Vだったとすると、プラス極は101.5Vになります。つまり、”電圧”とは相対的な電位の差を表します。
次に、アースにマイナス極を接続すると、マイナス極の”電位”0V、プラス極は1.5Vとなります。つまり、”電位”とはアースを基準とした電位の絶対値を表します。
英語で表すと少しわかりやすいと思います。
    電位(potential)   基準(アース)からの電位
    電圧(voltage)     異なる電位間の差(電位差)

大地を基準(”0V”)としたのは、地球は非常に大きな導体なのでどこでも同じ電位となるためです。直感的には岩や砂など電気の通らないイメージがありますが、大きなスケールでは電気が通ります。落雷が地面に落ちるのもそのためです。

アースの目的と種類

前述の通り、アースは大地への接続を意味しますが、実際には大地を使わない0Vに対してもアースという言葉を使います。

アース(WIKI
接地(せっち)とは、電気機器の筐体電線路の中性点・電子機器の基準電位配線などを電気伝導体で基準電位点に接続すること、またその基準電位点そのものを指す。本来は基準として大地を使用するため、この名称となっているが、基準として大地を使わない場合にも拡張して使用されている。アース: earth)、グラウンド: ground)とも呼ばれる。

アースには概ね4種類の目的があります。コネクタでは電気保安用としてのPE(保護アース)、ノイズ対策、機能用アースの3種類が主に使われます。

電気保安用アース

電気保安用アースは感電防止のために使用されます。規格と安全①でもお伝えしましたが、電気は意外に怖いもので、100Vのコンセントでも濡れた手で触ると感電死する危険性もあります。
そのため、機械装置の駆動用電源など大きな電圧・電流を扱う場合には細心の注意が必要となります。

電気保安用アースの扱いは、電源そのものの配線システムによって変わります。
上記の表を見てください。JIS C60364-1の312では、交流電力系統を通電導体の配置及び接地の方式によって、TN、TT及びITに分類してます。主に日本やイタリアではTT方式、その他の国ではTN方式が主流です。

<TN方式>

TN方式は系統全体に渡って独立した保護導体を用います。実際には三相交流の中性点が保護アースと共有されており、電力供給源から設備まで全体に接地されています。

<TT方式>

TT方式では、電力系統の中性点とは電気的に独立して設備側でアースを接地します。
どちらの方式にもメリット・デメリットがあります。

問題はドイツなどTN方式の設備を日本に輸入した場合には、トランスで電源電圧を合わせたとしても、日本では電力供給側にはアースがありませんので、設備のアースが浮いてしまい、ノイズによる誤動作や漏電が発生する可能性があります。
また、アース線のサイズ選定はTTとTNで考え方が異なります。TTの場合は使用する機器の容量から、TNの場合は配線で規定が決まります。
下表はTT(日本の内線規程)、TN(IEC61984)から抜粋したものです。条件によって異なりますので、参考としてください。

優先接触保護アース

では、コネクタでの感電保護に関して見てみましょう。
EN /IEC 61984規格で規定されている角型コネクタの脱着は電源を切った状態(コールドプラグ)で行う必要があります。とはいえ、万が一に備えて安全対策が施されています。
コネクタ操作で感電の可能性のある箇所は、①金属のエンクロージャと②コンタクト(電極)の2箇所です。
① 金属エンクロージャの保護
金属エンクロージャはインサートを通じてPE(保護アース)に接続される構造になっています。保護アースは電極より先に接続する、優先接触となっており、PE(保護アース)を正しく配線していれば、感電の心配がない構造となっています。
② コンタクト(電極)の保護
角型コネクタでは動力側になるメスインサートは指が入らない構造(IP2x)となっています。

相互配線(両方が動力側になる可能性がある)などで、オス側を保護する必要がある場合には、IP2Xに対応したインサートが用意されています。

変わったところでは、オスコンタクトの先端に樹脂を配置することで、感電保護を行う製品もあります。(CX7MA..P コンタクト

今回は電気保安用のアースについて解説しました。次回はノイズ対策や機器アースについて掘り下げてみたいと思います。

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コメント

    • ラオウ
    • 2021年 9月 22日

    この記事はなかなか勉強になりました。

    • ラオウ
    • 2021年 9月 22日

    TT方式と TN方式のメリット デメリット表の記載が上の絵と順番が逆です
    こういうのは絵と順番を合わせたほうが見やすいです

    • ラオウ様、いつも当ブログにお越しいただきまして、ありがとうございます。
      貴重なご意見をありがとうございました!
      アドバイスを元に順番と色をつけて少し見やすくしてみました。

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