世界標準の産業用コネクタ　ILMEブログ

コネクタを学ぶ③　四角 vs 丸

今回からは、少し実践的な話 ”耐環境コネクタの種類”について説明します。

以前、コネクタについて学ぼう！②で少し説明をしましたが、イルメが扱っているのは”産業用角型コネクタ”で、屋外や工場などの厳しい環境で使われる部品です。”耐環境コネクタ”とも呼ばれています。

実は、”耐環境コネクタ”にはイルメのような”角型”とは別の形のコネクタがあるのですが、みなさまはご存知ですか？

”角型”でなければ、”丸型”でしょうか（笑）？

正解です！世の中で幅広く使われている”耐環境コネクタ”には”角型”と”丸型”の２つがあります。まず、丸型コネクタについて説明します。

この丸型コネクタは”MIL規格コネクタ”とか”MSコネクタ”と呼ばれています。MIL規格 とは、United States Military Standardのことでアメリカ軍が必要とする物資の調達基準を決めた規格です。ミルスペック(MIL-SPEC)とも呼ばれ、MSコネクタの”MS”の由来です。

どうして産業用のコネクタに軍隊の規格が使われているのでしょうか？

その説明には、産業用コネクタの使われ方について少し説明が必要になります。前述のように厳しい環境で使われるものなのですが、具体的にどんな設備で使われているかお分かりでしょうか？

ロボットとか工作機械に使われているのはご存知な方も多いと思います。

それ以外にも自動車の生産設備や鉄道、風力発電など、どれも高い信頼性を求められる用途ばかりです。たとえば、コネクタの故障でロボットが誤動作したら大変ですよね？

MSコネクタは主に米軍の航空機の電気接続用として発展してきた部品です。振動や温度などの厳しい環境だけでなく、誤動作で墜落などの大事故にならないように高い信頼性が求められているのです。

なるほど。産業用でも高い信頼性が求められる用途に使えるってことですね。
でもどうして”丸型”なんでしょうか？

航空機は設置スペースが限られているので、できるだけ小さいものが求められます。”丸型”であることで、円形のピンを丸の中に沢山配置できるし、なにより防塵・防水と、固定をするための機構がネジで小さくできることがメリットになります。

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MSコネクタの歴史は長く、1930年代初頭に開発された航空機用のコネクタをベースに規格化されました。代表的な規格であるMIL-C-5015は1949年に標準化され、現在では様々なメーカーが製造しています。現在は米軍規格としてのMIL-C-5015は使われていませんが、今でも業界標準となっています。

ずいぶん古くからあるんですね。
逆に”角型”の歴史とか、どうして四角なのか？も気になります。

角型コネクタはMSコネクタとは異なり、産業用途を目的に開発されたコネクタです。
生産設備の制御にはPLC（プログラマブルロジックコントローラ）や産業用のパソコンが使われているのはご存知だと思います。

とはいえこれらのデジタル技術は大昔から存在していた訳ではなく、1980年代に自動車の生産設備を中心に普及し始めました。それまでの機械制御は主にリレーという部品をつかって行われていました。

一つ一つの機械の制御にたくさんの部品をつけなければならなかったので、設計やメンテナンスも大変だし、なにより複雑な制御を行うことができませんでした。もっと自由で高性能な制御を実現するシステムとしてPLCが登場しました。

上の写真ではPLCにたくさんの配線（青色）がつながっているのがわかると思います。PLCの登場によって制御されるセンサーや機器が飛躍的に増えたため、必然的に”大量の配線を効率的につなげるコネクタ”が求められるようになってきました。

そこで、角型コネクタは欧州で1980年代に誕生しました。”角型”である理由は主に２つです。
　・ワンタッチレバーで脱着できるようにする
　・数十極を超える配線を間違えずにできる

産業用だから、大きさよりも使い勝手を重視したということですね。

下記に角型と丸型の特徴をまとめましたが、どちらが良い・悪いではなく、用途や目的に最適なものを選定するのが大事です。

ちなみに、角型はヨーロッパ生まれで、丸型はアメリカ生まれです。そのため、普及している地域も異なります。日本ではアメリカの影響で丸型が主流となり、製造している日本メーカーも多くありますが、最近は使い勝手や機能性で角型も幅広く普及しています。

今回は耐環境コネクタの種類として角型と丸型の違いを説明しました。
次回は角型コネクタとメーカー間の互換性について解説します。