コネクタ用途徒然草 工作機械④
工作機械は産業用角型コネクタが多く使われている業界の一つです。
このシリーズでは用途や角型コネクタのメリットについて徒然なるままに解説いたします。
コネクタ or 引込み配線?
前回にひきつづき、引込み配線とコネクタ接続について考えてみたいと思います。
時代は繰り返す
上記は工作機械の受注金額の推移です。
リーマンショックの2009年を底に順調に回復し、2018年でピークを迎えました。2019年に少し下がり、2020年はCOVID-19の影響で大きく落ち込みました。
このグラフをみてもらうと、3〜4年の周期で増減しているのが分かります。
実はこの周期がコネクタと引込み配線の選定に関係しているのです。
上記の表はコネクタ接続と引込み配線を簡単に比較したものです。
ここで話題になるのが、変動費=部品コストと固定費=加工コストです。
一般的に景気が良くなり生産が増えてくると、製造現場への負担が増え、また生産効率が問題になります。
いわゆる上げ潮のときにはコネクタ化は下記のようなメリットがあるため、採用が広がります。
・ハーネス加工を外注化できるので、社内リソースを増やさず対応できる
・高いメンテナンス性で、サービス部門の負担が減る
・電気調整と機械加工を分業化できるため、量産効率が上がる etc.
つまり、現場が喜ぶことが多いのがコネクタなのです。
一方で景気が悪くなり下げ潮になると、今度は変動費の調整圧力がでてきます(固定費=人件費のカットは簡単にはできない)。その場合は引込み配線が進むことになります。
そういうわけで、業績の良し悪しでコネクタ化が進んだり、引込み配線が進んだりします。
技術伝承
団塊の世代の引退による人手不足は、電気の世界でも同様です。
主軸モーターの配線の特性調整といった特殊技術はさることながら、機械の中をきれいに配線して、制御盤のダクトに整然と納めるには、やはり高い技術が必要と言えます。
下記は第2種電気工事士の人員推計です(経済産業省HPより)。
国内の景気低迷で工事需要が減ると見込んでも第2種電気工事士が不足する見通しになっています。
この数字が工作機械の制御配線に直結しないとは思いますが、人材不足への準備が必要と考えさせられます。
そういう意味では、コネクタ化による生産効率のアップは上記の景気の変動とは別に考えなければいけないテーマなのかもしれません。
生産効率
ここで、コネクタ化と生産効率について少し説明したいと思います。
”電気調整と機械加工を分業化できるため、量産効率が上がる”と前述しましたが、この部分がまさにポイントになります。
下図は工作機械のシステムテストのイメージ図です。引込み配線の場合は、全ての配線を完了した上で、テスト・調整を行います。
もちろん、組立を完了してからでないとテストができないことも問題なのですが、トラブルが発生した場合にメカ側の問題か、制御の問題なのか?を切り分けるのも非常に難しいです。ここで、コネクタでメカと電気を分離しておけば、別途用意したテスターで動作確認なども簡単に行うことができます。
特に工作機械のメカは高精度を要求されるため、温度管理がしっかりとした場所で生産されるケースもあります。
量産時の生産性では、コネクタを使用することで大きく改善が期待できます。
まとめ
変動費(部品コスト)と固定費(人件費)のバランスは永遠のテーマです。多くの会社では設計側と生産現場の主張がぶつかる部分でもあります。
一方で熟練工の不足や競争力の確保という意味で、変動費・固定費という考え方だけでなく、より生産効率が高い手法を考えていくことも重要と思われます。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。