電圧と電流を操る?!②


前回につづき、電圧や電流をうまく活用する方法をお伝えします。

コネクタ選定における電圧と電流

コネクタ選定②で解説しましたが、電気接続を行うコネクタを選定する場合には、当然のことながら用途で使う電流や電圧にマッチしたコネクタを選ぶ必要があります。

ところが、一般的に電流値や電圧値が大きくなるほど、コネクタのサイズが大きくなったり、極数が足らないなんてことが良くあります。
ここでは、コネクタの電圧・電流に関する安全設計についての解説と合わせて、定格以上で活用する方法についてお伝えします。

電流と温度のアツい関係

今回は電流について説明します。
高電流による事故は、発熱が原因となる場合がほとんどです。コネクタの場合は、樹脂インサート部品の耐熱温度(130℃〜200℃程度)を超えてしまうことで、インサート部品が融解します。すると、周辺の電極とのショートが発生し、発熱と放電により発火することもあります。(基本的にイルメコネクタのインサートは自己消火性樹脂を使っていますので、簡単には発火しません)

ジュールの第一法則

ここで、電流と熱の関係について、おさらいしておきましょう。
導体を流れる電流とそれにより発生する熱の関係を示すのが、ジュールの第一法則です。この熱のことをジュールと呼び、公式は以下のようになります。

Q = I 2 * R * t  (Q: 熱量[J}, I: 電流[A], R: 抵抗[Ω], t: 時間[s])

この式を見て、”電圧”は?と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
オームの法則 V= I * R ですから、Q = I * V * t とも書くことができます。

少し余談になりますが、Q = V2 / R * t と変換することもできます。
しかし、商用電源は一般的に電圧が一定で、使用する機器によって電流値が変わり、結果として消費電力が変わります。そのため、コネクタの選定において熱を考える場合は電流値をベースに検討を行う必要があります。

さて話を戻しまして、Q = I 2 * R * t  の右辺を見ると、抵抗や時間も比例しますが、電流については2乗で比例します。これをみても、大きな電流を流す場合には熱について十分に考慮が必要であることがわかると思います。

コネクタの大きさと定格電流

ここで、コネクタの大きさと定格電流について考えてみたいと思います。
電流が大きくなると、その2乗で発熱が比例するのは前述した通りです。しかし、樹脂製のコネクタインサートは温度を上げることができません。
つまり、Q = I 2 * R * t左辺”Q”を一定にしなければなりません。
では、どのように高電流対応をしているのかを見てみましょう。

下記は定格電流が100Aのコンタクトと10Aのコンタクトです。
ずいぶんと大きさに違いがあることがわかりますね。特に太さが違います。

それぞれの仕様上の接触抵抗は
  10A 3mΩ以下
  100A 0.3mΩ以下
となっています。ちゃんと、定格の違い通りに抵抗値が低くなっています。

下記のように、高電流に対応したコンタクトは大きな面でしっかりと結合することで接触抵抗を減らしています。


しかし、これは接触している部分の抵抗です。
コンタクトそのものの抵抗は、断面積に反比例します。
定格電流10倍、断面積25倍(半径5倍の2乗)として、Q = I 2 * R * t の式にあてはめてみましょう。
  10Aの場合  Q10A = I2 * R * t
  100Aの場合 Q100A = (I * 10) 2 * R/25 * t = Q10A * 4
ということで、これだけ太いコンタクトを使っても、まだ4倍残っています
ここだけ見ると、問題がありそうですね?!

発熱・放熱のしくみ

上記でコンタクトの構造について説明をしましたが、実はコネクタの限界電流値は使用する電線の太さによって支配されています。
下記はコネクタの発熱と放熱(熱伝導)を簡略化した図になります。



発熱源は電流が流れるところ、つまり導体(電線とコンタクト)になります。
電線についても絶縁被覆が溶ける温度まで電流を流すことはできません。
下記は電線に使われる被覆材料の限界温度ですが、フロン系のPTFE以外は概ね100℃以下(同一材料でもJET認定で110℃などに対応しているものもあります)なので、インサートの耐熱温度130℃程度よりも低くなっています。


したがって、上記の図でいうとコンタクトの発熱が130℃を超えたとしても、電線側に熱伝導で放熱されて冷やされるため、コンタクトの太さ不足が解消されます。

実際に100Aタイプのインサートの限界電流は下記のディレーティング曲線になります。


50℃の使用周囲温度での限界電流は、16mm2の電線で約88A、35mm2で約135Aとなっています。断面積が2.2倍に対して、限界電流は約1.5倍です。およそ断面積の2乗に反比例しています。
実際の機器では、エンクロージャからのふく射放熱や空気の対流による放熱などの要素があります。そのため上記のディレーティング曲線は実際の限界電流の80%(20%はセーフティーマージン)で規定しています。くわしくはこちらを参考にしてください。

今回は発熱と電流の関係、コネクタの限界電流について解説をしました。次回はこれをふまえて、定格電流値を超える使い方について解説します。

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