前回に引き続き日本のマーケットについて見ていきたいと思います。
前回の記事ではGDPのトップ10カ国で日本とイタリアだけが、2010年比較でマイナスしているという残念な内容をお伝えしておりましたが、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
名目GDPと実質GDP
内容に入る前に、一点お詫びが必要です。前回ご紹介したデータ(日本がマイナス)は、名目GDPでのデータになります。
前回ご説明した通り、GDP(Gross Domestic Product)とは年間で国内で生み出された付加価値額の総額になりますが、
名目=実際に取引された金額での集計
実質=価格変動要因を除いた集計
と2種類あります。
インフレ(物価上昇)とデフレ(物価下降)はどちらが良いというものではありませんが、インフレが続いている国では名目GDPは大きく伸びるため、客観的な比較ができません。そのため各国の比較を行うためには実質GDPも考慮する必要があります。
また、前回のデータは各国間の比較をするためにUS$変換されていますので、為替の問題も含まれてしまいます。今回も1980年を100とした場合で成長率を比較していきます。では実際にデータを見てみましょう、まずは名目GDPです。
グラフ化すると、中国・インドなどの成長著しい国のデータで潰れてしまうので、先進7カ国だけにしています。では、次に実質GDPです。
名目に比べると少しだけマシになりました。とはいえ、他の5カ国と比較すると、1990年代に発生したバブル崩壊をキッカケにフラットになってしまっているのがお分かりいただけると思います。
ここでも我が愛するイタリアと日本の共通点が見られます。いずれも中期的な成長ができていないということです。
前回同様に数字もご紹介しておきます。
出典:IMF(International Monetary Fund 国際通貨基金)が提供している、World Economic Outlook Database 2022年4月版
名目GDP Gross domestic product, current prices National currency
実質GDP Gross domestic product, constant prices National currency
このように比較すると、ある意味日本は物価や経済状態が非常に安定しているといえます。
少し視点を変えてみてみると、名目GDP/実質GDP =インフレ/デフレ率でGDPデフレータと呼びます。
日本はバブルが弾けた1990年以降の物価が非常に安定しています。ではデフレータの比較を見てみましょう。
GDPデフレータは各国で基準が異なりますが、概ね2010-2012年あたりを100としています。いずれにしても、経済成長している国は緩やかなインフレが続いていますが、日本の場合はやはりバブル崩壊後からデフレが継続しているのがお分かりいただけると思います。
日本のGDP
では本題の日本のGDPの内訳を見ていきましょう。データは内閣府が提供する国民経済計算(GDP統計)をつかって分析していきます。
ちなみに、データは昭和10年代からあるのですが、基準が整い比較できるデータは1994年からになります。
上記の表は昭和14年のデータの抜粋ですが、昔はすべてソロバンと手書きでやっていたと思うと本当に大変な作業だったと思います。
では経済活動別の国内総生産のデータを見てみましょう。1994年を100としたときの伸びと、各業種のシェアを表にまとめました。
1994年というと、筆者が新入社員として社会人生活をスタートした年ですが、ちょうどバブルが弾けようとしていた時期です。
シェアを見てみると、やはり3.製造業が20%前後と一番大きく、日本が産業国であることを実感できます。次に卸売・小売、不動産業と続きます。
伸び率も見てみましょう。一番の伸びは9.情報通信業でスマホの普及そのものが反映されていますね。
次の伸びは12.専門・科学技術、業務支援サービス業、4. 電気・ガス・水道、15.保健衛生・社会事業と続きます。なぜ伸びているのか?ちょっと深く調べたくなる内容ですが、我々の目的は製造業が対象なので、一旦おいておきましょう。
では、製造業の中身を見ていきます。
同様にシェアと伸びを見てみましょう。
シェアでは、(13)輸送用機械(=自動車)、(9)はん用・生産用・業務用機械(機械設備全般、ロボットや工作機械も含む)、(1)食料品の3強となっています。
一方で伸び率では(10)電子部品・デバイスが大きく伸び、(12)情報・通信機器、(13)輸送用機械が続きます。いずれにしても製造業全体では伸びが少ないのが問題です。
こう見ると、安定の(1)食料品はさておき、日本の製造業は(13)輸送用機械が質・量共に牽引し、(9)はん用・生産用・業務用機械が苦労しつつ、(10)電子部品・デバイスが貢献しているという姿になりそうです。
さて、今回は国内のGDPの内訳について深堀りしてきました。日本はやはり伸びていないという結論は間違いありませんが、次回は海外との比較を含めて調査をしていきたいと思います。
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