大電流の場合の選定方法について解説します。
”でかすぎる!”
当たり前の話ではありますが、高い電流を流そうとすると接続部のコンタクトサイズはどんどん大きくなっていきます。結果としてコネクタそのものも、大きくなってしまいます。
上の写真は100A用のピンと5A用のピンを比較したものです。電気接続する部分の外形(写真では上の円筒部)は100AがΦ8mmで5AがΦ1mmです。
サイズ感を見てもらうために、タバコを置いてみました(禁煙してから15年ぶりに触りました 笑)。
一般的な産業機械に携わる方ですと、100Aは主電源のブレーカー配線といったイメージだと思います。
工場の動力から丸端子でガッチリと接続されているイメージですね。
これをコネクタで脱着しようとすると、やはり”でかすぎる”ぐらいのコンタクトでないと安心できないと思います。
大電流コネクタと実際の選定
実際の大電流のコネクタの選定について見てみましょう。上のコネクタは前述比較写真の100A用コンタクトを実際に搭載することができるコネクタです。
写真ではわかりにくいですが、およそ100 x 30 mmとちょうどロングサイズのタバコの箱と同じぐらいです(タバコの箱サイズ)。
このブログでも何度か説明していますが、コネクタの許容電流値は使用する電線によって大きく変わりますので、”100A”という定格はあまり当てになりません。下表は上のコネクタのディレーティング曲線になります。
イルメの100Aコンタクトは対応する電線外径に合わせて8〜10mm2用、16mm2用、25mm2用、35mm2用の4種類があります。では、接続される電線についても少し確認してみましょう。
下記はCVケーブル(架橋ポリエチレンシース)の40℃の場合の許容電流値です。
上記のコネクタの場合は6芯なので三相電源を接続したと考え、3Cのデータを見てください。22mm2の40℃で100Aとなっています。インサート側は25mm2の40℃で110Aですので、およそ同等といっても良いでしょう。
ここで疑問をお持ちの方がいらっしゃると思います。コネクタが25mm2なのに、電線が22mm2だったらどうなるのか?と。
”安心してください、使えます”
上記のように4種類のコンタクトがあるのですが、下のサイズのコンタクトよりも大きい電線径〜コンタクトサイズまでは使えます。まとめると以下のようになります。
上記は100A用のコンタクトになりますが、小さい電流値においても同様です。
イルメのコンタクトは切削加工で強力な圧着で接続するため、電線径の違いを吸収することができます。
ただし、ロボットケーブルなどの稼働用電線の一部には介在(太陽ケーブルコラム)が導体の間に挿入されており、実際の外径が大きくコンタクトに挿入できない場合などもあります。
使用可否については、EN規格61894で規定された引張強度等で評価ができます。心配なときはメーカーに確認してください。
話を許容電流に戻しまして、大電流のコネクタを選定する場合はケーブルの導体径も一緒に検討することが重要ということがお分かりいただけたと思います。
サイズの制限がある場合
大電流を使いたいが、設置スペースに制限がある用途では、少し工夫が必要になります。機械内部のモーター配線などでよくある話です。
解決策としては、前回説明しました実効電流値を検討する方法もありますが、もう一つの方法として、インサートの素材を変更する方法があります。
上記の写真は高温対応のコネクタインサートです。下表を見てください。
左が標準タイプ、右が高温対応タイプのインサートのディレーティング曲線になります。
違いはわかりますでしょうか?ヒントは”周囲温度範囲”です。標準タイプは0〜130℃のグラフですが、高温対応タイプは55〜185℃のグラフになります。
60℃で16mm2の導体を使ったときに比較すると、標準が78Aに対して高温は107Aとなり、約4割ほど許容電流がアップしています。
この秘密は電圧と電流を操る①で少し解説しましたが、インサートの素材の違いです。一般的なインサートはPC(ポリカーボネート)で仕様上の耐熱温度は125℃になっています。高温対応タイプはPPS(ポリフェニレンサルファイド)で耐熱温度が180℃です。
コストや加工のしやすさの問題もありますので、PCが標準的に使われています。
イルメでは特注対応もいたしますので、仕様にマッチしない場合にはぜひお問い合わせください。
次回は大電流コネクタを扱う場合の注意点について解説します。
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