サプライチェーンの混乱について③

COVID19による景気低迷から、withコロナ時代への突入による急激な景気回復、そしてウクライナ危機が発生しサプライチェーンが大きく混乱しています。
身近なところでは食品の値上げなど生活にも影響がでておりますが、産業界においてもこの混乱により大きく影響がでています。

今回はサプライヤーの立場から見て、何が起こっているのか?どのように対応しているのか?を解説したいと思います。
”納期遵守率90%”を誇るイルメの秘密にも迫ります!

急激な停滞と急激な回復

内閣府:機械受注統計調査報告データから作成

上記のグラフは内閣府が提供している機械受注調査から作成したものです。
機械受注調査は設備用機械の受注状況を調査することで、設備投資動向を把握て経済動向分析を行うために行われています。なお、業種の8割程度をカバーする対象企業からの調査のため、受注金額合計もマーケットの8割程度となりますが、傾向を見るためには十分なデータと思われます。

さて、機械受注の推移を見ると、COVIDの影響を受けて2020年2Qは大きく落ち込みました(前年比-17%)。ここで、ワクチン普及の効果もあり、2021年1Qから大きく回復し、そのプラス基調は現在も続いています。

経済産業省 鉱工業生産指数(IIP)データより作成

では、好調な受注状況に対する、実際の生産状況について見てみましょう。経済産業省が提供している鉱工業生産指数が参考になります。
グラフの軸数字が違うため比較が難しいのですが、同様に2020年2Qに落ち込み、2021年1Qから回復しています。
前年比較すると、2021年4Qの受注が+23%に対して、生産は+14%と若干のギャップがあります。

いずれにしても、製造業の世界で見るとCOVID前よりも受注・生産共にCOVID前を大きく上回る状態となっています
問題は、急激な回復が発生したために、感染拡大を受けて縮小した生産体制の回復に時間がかかること、合わせて輸送インフラの停滞も続いていることから、製造現場では大変な混乱を招く結果となりました。

受注と生産のギャップ

日本ロボット工業会 統計データより作成
日本工作機械工業会 統計データより作成

上記グラフは日本が世界に誇るロボットと工作機械の受注・生産の状況をグラフ化したものです。やはり、概ね2021年1Q頃から大きく受注が回復していますが、生産のほうは回復しきれずギャップが大きくなっています。
特に工作機械は様々なメカ・電気部品を組み合わせたシステムのため、サプライチェーンの混乱による影響が大きいようです。

電気制御機器の納期トラブル

2021年の回復期に大きく話題になったのは、PA(ポリアミド)樹脂が不足!ということでした。PAは加工性や絶縁性に優れるため、電気制御機器に非常に適しています。イルメコネクタのインサートにもPAが多く使用されています。
実際には2019年時点でもPAの不足というのが話題になっていました。これは、自動車メーカーが軽量化のためにエンジンフードなどの部品に多くPAを採用し、需要と供給のバランスが崩れたためでした。
2021年のPA不足はCOVIDで下がった需要と生産調整に加えて、米国の大寒波による影響がありました。
当時の生産現場ではこの話題ばかりが沸騰していて、2021年の秋頃には落ち着くのではないか?といった情報が飛び交っていました。
しかしながら、部品納期問題は2022年6月現在でも続いており、むしろ深刻化していると言えます。

現在発生している納期トラブルの原因は主に以下の通りです。
・生産能力の不足
原材料の供給不足
・半導体の供給不足
・拠点間の物流の問題

前述した通り、現在の需要はCOVID以前よりも増加していますので、生産能力が足りていないことが根本的な原因といえます。
さらに、PLCなどの制御機器は半導体も使用し、また国外製造が進んでいるので中国やベトナムのロックダウンの影響を強く受けてしまっています。
コネクタ部品でもエンクロージャやインサートを別々の国で生産している場合、拠点間の物流が滞ることで、納期に大きな影響が出てしまいます。
この状況が解決するには、生産能力と物流の正常化が必須となりますが、まだまだ時間がかかりそうです。

納期遵守率90%

神戸にあるイルメジャパンの倉庫の様子

業界的に納期トラブルが続いていますが、おかげさまでイルメは納期遵守率90%台をなんとか維持しています。もちろん、万全ではなくご迷惑をおかけしているケースもありますが、比較的良い状態で運営することができました。
イタリアの製造がロックダウン中も稼働できた等のラッキーもありましたが、まだ続くサプライチェーンの混乱におけるヒントになるかもしれません。

①COVID発生と景気低迷
欧州に比べると、日本でのCOVIDの感染拡大は比較的ゆるやかで、日本で景気低迷の影響が顕著になったのは2020年の6月前後でした。
イルメでは国内に概ね需要3ヶ月程度の在庫を保有しています。売上は半減しましたが、コネクタは劣化しにくい商品のため一定レベルの在庫を確保していました。
また、イタリア本社ではロックダウン中も生産を継続することができたため、生産人員・体制を維持することができました。

②③ワクチン普及と景気回復
ワクチンが普及し、欧州では2021年1Q頃から急激に景気が回復しました。日本では少し遅れ2Q頃からの回復です。
受注が倍増以上となり、生産キャパを100とすると、150の受注が大波のように押し寄せてきました。
イルメでは一定レベルの在庫を確保していましたし、生産体制は維持していましたので、初動ではある程度対応が可能でした。
しかしながら、生産キャパを超える受注が続くと在庫バッファーもすぐに枯渇します。
一方で客先からの注文の多くは”パニック注文”で実需要との乖離があります。
そこで、”本当に必要な数量”を世界中から厳選して、優先順位をつけて供給を行うことで、最適化を図りました。
また、各国にある現地法人間で不足部品の都合を行うことで、マーケットニーズへの対応を行いました。

④大規模な設備投資
景気回復の初期段階で大規模な設備投資の判断を行い、生産キャパの大幅増加に踏み切りました。ただ、自動機や加工機の納入・立上げには時間がかかるため、まずは作業シフトの増強と外注業者の拡大により生産キャパを強化しました。

⑤ウクライナ危機と原材料・輸送費の高騰
急激な需要回復が需給バランスを崩し、結果として原材料の高騰につながっています。

銅価格推移

この状況では価格よりも納期を優先しなければ、生産キャパの確保はできません。
さらに、ウクライナ危機により鉄鋼やエネルギー価格の大幅な高騰が拍車をかけました。前々回に解説した通り、ロシア領域の制限により航空運賃も大幅に跳ね上がりました。
イルメではお客様にもご理解をいただきながら、”納期最優先”のスタンスで全リソースを振り分けて対応を進めました。

⑥ようやく出てきた設備投資効果
昨年から準備してきた設備投資効果により、生産キャパが逐次向上してきました。イルメの扱う5000種類以上のパーツ全ての在庫を確保するには、まだまだ時間がかかりますが、少しづつですが在庫の積み増しができるようになってきました。

サプライチェーンの混乱はまだまだ続いています。さらに強烈な円安トレンドにより、イタリアから商品を輸入しているイルメとしては非常に厳しい状況が続いています。
一方で世界で活躍している日本の機械メーカーにとっては大きな利益を獲得するチャンスになっています。
我々はそういった機械メーカーの生産をしっかりと支えるために、これまで以上の製品の安定供給を追求していかなければなりません。

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