コネクタを学ぼう⑭ 耐環境性について 〜温度編〜

角型コネクタは生産現場や鉄道など厳しい環境で使用することを想定された製品ですが、一言に耐環境性といっても、環境温度・湿度・化学薬品・振動・油・スパッタなど様々です。
様々なシーンに最適なコネクタ選定方法について学んでいきましょう。

温度環境

まずはベーシックな温度環境です。
標準的な角型コネクタは – 40℃ 〜 + 125℃に対応しています。
(注)一部通信用のコネクタなどでは最大+70℃または85℃となっていますので注意が必要です。
一般的な用途であれば十分な温度範囲と言えますが、冷凍庫やスキー場などの低温用途や、オーブンなどの高温に対応した特殊品もあります。まずは、これらの温度範囲の理由を見ていきましょう。

低温の限界

角型コネクタはIP66以上の保護等級を持っています。このオス・メスの結合部をしっかりと保持して防水・防塵を実現しているのが、レバーシステムとガスケットです。低温の限界はこのメカニズムで決定されます。


上図のように、レバーが上部のフードを下部のハウジングに押し付けます。
これによりガスケットがつぶれて密着することで防水・防塵性を保ちます。
つまり、ガスケットの柔軟性が重要なのですが、低温になるとガスケットが硬化するため、防水・防塵性が低下します。
下記はガスケットで使われている各素材の耐熱・耐寒特性です。標準で使われているニトリルゴム(NBR)は-40℃程度になると固くなります。
ゴムが低温で固くなる現象を低温ぜい化(脆化)といいます。


イルメの商品では、ガスケットにシリコンゴムを使用し-50℃まで対応した食品向けハイジェニックTタイプ/Cがあります。
<低温対応 Tタイプ/C>

ここで疑問なのは、上図ではシリコンゴムは-100℃まで対応なのに、-50℃なのか?ということです。これは、インサートに使用されているナイロンのぜい化温度が-40℃前後であるためです。さらなる低温を目指すためにはインサート材料の変更が必要です。また、電線の被覆で多く使用されている塩ビのぜい化温度は-20℃前後ですので、意外に低温対応というのは難易度が高いのです。

低温対応にはもう一点気をつけなければならいことがあります、”結露”です。

低温になると空気の飽和水蒸気量が下がるため、空気中の水分が結露します。
IP66以上の防水性を持つエンクロージャなのに?と感じられるかもしれません。
主に下記の3つの理由で結露が発生する可能性があります。
①エンクロージャ内部に残った空気中の水分が低温により結露
②温度変化による内部空気の膨張・収縮で外部空気が流入
③ケーブルエントリーなどガスケット以外から空気や水が侵入


上記の①と②について、すこし具体的な数字で見てみましょう。

①エンクロージャ内部の水分
角型コネクタの内部空間は大きいものでも500,000mm3程度です。
30℃での空気の飽和水蒸気量はおよそ30g/m3(湿度100%の水蒸気量)なので、作業温度30℃で封止したときには、最大で15mg程度の水分しか発生しません。
→ほぼ問題にならない量ですが、できるだけ乾燥した環境でアセンブリしたほうが良いでしょう。

②温度変化による膨張・収縮
標準品の温度範囲である、最低の-40℃から最大の125℃まで変化した場合の空気の膨張率は約1.7倍です。
→これだけの体積変化があると、ガスケットまたはケーブルエントリー周辺からの空気の流入の可能性があります。したがいまして、温度変化がある場合の防水性確保については、慎重に検討する必要があります

高温の限界

高温の限界は、低温と異なり2つの要素があります。

①構成部品による温度限界

下記はコネクタを構成するパーツの耐熱温度です。アルミ製の金属エンクロージャですが、樹脂塗装されていますので250℃程度の耐熱となります。

樹脂製のエンクロージャを使用した場合には、インサートの耐熱温度125℃よりも低くなりますので注意が必要です。

イルメ商品の高温対応商品では180℃タイプがあります。耐熱性樹脂(PPS樹脂)を使ったインサートと、高温対応のハンドル、ガスケットの組み合わせで実現しています。

(高温対応エンクロージャ)
(高温対応インサート)

②ディレーティングによる制限

以前、コネクタ選定③でも解説していますが、限界電流と使用温度環境は密接に関係していますので、慎重に選定を行う必要があります。
下記は一般的なインサート部品の仕様例です。

定格電流は10Aとなっていますが、使用する環境によって実際に流せる限界電流は大きく変わります。
例として上記仕様書にある9極タイプのディレーティング曲線を見てみましょう。
たとえば、2.5mm2の電線を使用して10Aを流せる限界は約105℃となります。


合わせて、使用する電線の許容電流も見ておく必要があります。
こちらが参考になります(住友電工様のサイト)

まとめ

今回は低温や高温でコネクタを使用する場合のポイントを解説いたしました。
  – 温度変化が激しい環境では防水性能が低下する可能性がある
  – 低温ではガスケットの柔軟性が重要
  – 高温では部品の耐熱だけでなく、許容電流の考慮が必要

イルメではお客様の環境に合わせた最適な商品のご提案を行っていますので、ぜひお問い合わせください。

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