コネクタとアース③

コネクタを学ぼう⑬ アースについて(ノイズ対策実践編)

電気配線において、安全性や安定性を確保するためにアースは非常に重要な役割をもっています。今回はコネクタや周辺機器を使った具体的なノイズ対策をご紹介します。(前回の記事もご参照ください)

EMC指令

欧州に機械装置を販売するときに欧州指令(EU Directive)への対応が必須で、その中でも低電圧指令とEMC指令への対応は電気設計者にとって非常に重要となります。今回のテーマノイズ対策に関係するのはEMC指令(2014/30/EU)です。

EMCとはElectroMagnetic Compatibilityの略で日本語では”電磁両立性”と訳されます。”両立性”というのは聞き慣れない言葉ですが、電気機器の設計・製造基準として、”電磁的な干渉を受けない””電磁的妨害源とならない”を両立することを求めたのがEMC指令になります。

上図のようにEMC指令では、電磁的な干渉を受けない能力のことをEMS、周辺に電磁的妨害源とならない能力のことをEMIと言います。
コネクタ自身は受動部品ですので、基本的にノイズの影響を受けたり、またはノイズを発生することはありませんが、接続する信号の保護や発生する放射ノイズを防ぐ必要があります。

EMC対応コネクタ

では、EMC対応を行う場合にコネクタの選定はどうすれば良いのでしょうか?
結論は、
”金属製の標準コネクタでほとんどの場合は問題なし”
です。標準コネクタの筐体はアルミダイキャスト製で、PE(保護アース)と接続しています。
つまり、コネクタそのものがシールドとなり、アースに落ちています。したがって、前回説明した静電結合によるノイズ対策は完了しているということです。

上図はコネクタに対するノイズの影響を表しています。経験値として30MHzまでの信号は伝導性(静電結合ノイズ)、30MHzから1GHzまでの周期信号を放射性(電磁誘導ノイズ)とみなします。
伝導性ノイズは接続された信号からの影響ですが、放射性ノイズは電磁波による影響となるため、さらなるシールド効果が必要となる場合があります

基本的には放射性ノイズはその発生源に対策を行うことが重要ですが、コネクタ・配線によるEMC対策のアプローチは以下を参考にしてください。
(下に行くほどシールド効果が高くなります)

① 標準の金属タイプコネクタを使用する
② 動力などノイズが強い信号の場合、高速通信などノイズの影響を受けやすい信号の場合はシールドケーブルを使用し、シールドケーブルを保護アースに配線する、またはEMCケーブルグランドを使用する。
③ EMCコネクタを使用して、さらにシールド効果を高める。


ちなみにシールドケーブルのクランプを行う場合には丸端子にまとめて、PE端子(ネジ)に接続するか、下記のようなシールド固定具を使います。
コネクタインサートに追加できるシールド固定具

下表はそれぞれのシールド効果を比較した実験結果です。シールド効果としては③が最も高くなります。

装置としてのEMC対策と評価は実際に試験をしなければなりません。イルメとしては、まず試験用に標準品とEMCコネクタを用意して、問題がなければ標準品を使用することをおすすめしています。サンプル貸し出しも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
EMCコネクタのカタログはこちら

複合コネクタでの対策

角型コネクタの魅力の一つに、モジュラータイプによるコネクタの統合が挙げられます。動力信号や通信信号、エアー配管までも一つのコネクタに統合することができますので、メンテナンス性や小型化に大きく寄与します。
一方で大きな動力とシビアな信号を複合化するためには、やはりノイズ対策が必要になります。

そこで登場するのがシールドコネクタです。モジュラー内で独立したシールドを確保することができるので、動力のノイズからシビアな信号線を保護できます。

20極シールドモジュール

同様にシールドタイプのイーサネットケーブルを接続するモジュラーユニットもあります。

メガビットイーサネットモジュール

実際に複数の動力と通信信号を統合したコネクタの例です。

シールドモジュールのカタログはこちら

番外編

シールドケーブルを効果的に制御パネルなどに接地するためのパーツをご紹介します。
下記のようにケーブルの一部の剥いて、クランプパーツで挟み込みます。固定方法はネジやDINレールなどにも対応しています。

詳しいカタログはこちら

まとめ

コネクタや周辺機器によるノイズ対策についてご紹介しましたが、これらの部品はすべて受動部品で、ノイズを完全に消すことはできませんし、全てのノイズに有効な訳ではありません。
ノイズ対策が必要になるのは、EMC対策またはノイズによる不具合(機器故障や暴走)ですが、見えないノイズと戦うためには、原因を特定しつつ、様々な方法をトライして最適な方法を見つける必要があります。
イルメでは上記以外にも配線機器によるノイズ対策をご提案していますので、ぜひお問い合わせください。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

総合カタログダウンロード

イルメ コンフィギュレーター

仕様に最適なコネクタを選定

アプリケーション

用途別に最適なコネクタを選定

各種ダウンロード

コネクタお役立ち情報配信中

ページ上部へ戻る