コネクタとアース②

コネクタを学ぼう⑫ アースについて(ノイズ対策アース)

電気配線において、安全性や安定性を確保するためにアースは非常に重要な役割をもっています。今回はノイズ対策用アースについて掘り下げていきます。

ノイズとは?


ノイズ対策用アースは、信号に混入するノイズによる誤動作を防ぐ目的で設置されます。

ノイズとは本来伝達すべき信号に付加された、目的以外の信号のことです。したがって、ノイズは基本的に不要なものですので、排除または低減する必要があります。ただし、ノイズには様々な種類がありますので、その原因や性質を理解した上で対策を行う必要があります。

静電結合によるノイズ

電源ラインと信号ラインが同一に配線されている場合、上図のようにライン間およびアース等の導体とのあいだに浮遊容量(分布容量)によって結合されています。この容量を介して交流電源の電圧による影響が信号ラインに付加されるのが、静電結合によるノイズです。
静電結合によるノイズを防ぐためには、静電結合を防ぐことが重要です。
主な対策としては、

・信号ラインと電源ラインを離す(浮遊容量は距離に反比例)

・信号ラインにシールド処理を行う(シールドはアースに落とす)

※信号ラインの特性(熱電対や高いインピーダンスを持つ信号)によっては、注意して対応する必要があります。

電磁誘導によるノイズ

モータなどの大電流を使う動力では、駆動により強い磁界を発生します。上図のように磁界が信号ラインを横切ると起電力を生じます。この発生した起電力が電磁誘導によるノイズです。前述の静電結合によるノイズは電圧に起因していましたが、電磁誘導によるノイズは電流に起因します。対策は同様に電磁誘導を防ぐ必要がありますが、少し複雑になります。
主な対策としては、

モーターやトランスなど磁界を発生する機器から信号ラインの距離を離す。

動力ラインも磁界を発生するので、信号ラインから距離を離すことも大切です。

・ツイストペア線を使う

ツイストペア線を使うと捻じりあった2つの線を横切る磁界が反転します(上図のAとB)。そのため、電磁誘導によるノイズの影響を相殺することが可能です。

・磁気シールドを行う

<強磁性体によるシールド>
保磁力が低く、透磁率の高い強磁性体(鉄や珪素鋼)などで覆うと、磁束が磁気抵抗の低い強磁性体内部を通過しようとするため、シールド効果が期待できます。
実際には鉄のテープを信号ラインに巻いたりします。この場合鉄テープの両端を接地する必要があります。

<反磁性体によるシールド>
通常とは反対方向に磁化される反磁性体で覆うと、磁束が内部に入り込むことができないため、完全なシールドが可能になります。
ただし、反磁性を持った材質はビスマスやダイヤモンドなど希少なものがほとんどです。なお、超電導物質の中で透磁率ゼロの完全反磁性を持つものがあり、理論的には完全な磁気シールドが可能です。

・金属板によるシールド(導体の渦電流効果)

金属で覆う点では、上記の強磁性体によるシールドに近いのですが、シールドの原理が異なります。周期的に変動する磁界(交流磁界)が上記にように導体表面に加わると表面に渦電流が発生します。この渦電流によって磁界が減衰するのですが、磁界の周波数や導体の導電率によって減衰するする深さが変わります。銅の場合、50Hzの磁界では10mmまで到達しますが、1kHzの場合は2.2mmとなります。

まとめ

ノイズの発生原因は静電結合と電磁誘導の2種類になります。基本的に電圧によって発生する静電結合はシールドしてアースに落とすことで対策が可能です。電流によって発生する電磁誘導の場合は磁界を遮る必要がありますので、磁性体でカバーして両端をアースするというのが基本的なアプローチです。
両方の対策として銅テープ(静電結合)と鉄テープ(電磁誘導)を組み合わせるなどの方法もあります。
ただし、ノイズの大きさや周波数、また環境によっても対策方法は変わります。
今回はコネクタに関する情報がありませんでしたが、次回はノイズ対策に関してコネクタおよび規格関係について解説します。

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コメント

    • ラオウ
    • 2021年 10月 06日

    まとめのところで、磁性体でカバーして両端をアースすると記載されていますが、両端をアースすると両端のアースを通して循環回路ができてしまいませんか?

    • ラオウ様、いつもコメントありがとうございます。
      磁気シールドで両端アースを行う理由は、高周波ノイズの場合はインピーダンス整合をとって、シールド内での反射を避ける必要があります。逆に低周波の場合はノイズ電流による電圧が発生する可能性があるので、片端のほうが良い場合があります。循環回路についても、アースの位置やインピーダンスによります。次回のブログではそのあたりについても深堀りしたいと思います。

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