サプライチェーンの混乱について①

COVID19による景気低迷から、withコロナ時代への突入による急激な景気回復、そしてウクライナ危機が発生しサプライチェーンが大きく混乱しています。
身近なところでは食品の値上げなど生活にも影響がでておりますが、産業界においてもこの混乱により大きく影響がでています。
今回はサプライチェーン問題について深堀りしていきたいと思います。

航空輸送の現状

国土交通省 航空輸送統計年報 から作成

上記グラフは日本発着の国際航空機輸送の実績推移です。コロナ前の2019年までは旅客数が右肩上がりとなっていましたが、コロナ後はガクッと減ってしまっています。
もちろんこれは感染拡大防止のための入出国規制が原因ですが、実はこのマイナスが航空輸送に対して大きなダメージを与えています。具体的には、航空貨物は貨物専用機だけでなく、旅客機のスペースも活用して運用されています。したがって、旅客機運用が減ったことで貨物スペースがおよそ半分程度に減ってしまいました。
さらに、2020年の感染拡大で低迷していた市場が2021年となり急回復しました。過去のピークの2016年を超えています。スペースが減ってボリュームが増加していますので、需要>供給という状態が長く続いており、結果的に航空運賃が大きく高騰しました。イルメが使っている欧州航路ではコロナ前(2019年末)と比べて、およそ5〜10倍程度になりました。

冷戦前と同じ航路に

Google Earthを使って当ブログが作成

さらに、ウクライナ危機が発生したため、ロシア上空を通る最短ルートを使うことができなくなりました。

上記のように、回避する方法は北回りまたは南回りを選択する必要があります。
実は北回りルートというのは、冷戦時代に使用されていたもので”アンカレッジ経由”と同じような航路になります。
冷戦時代は当時のソビエト連邦上空を飛ぶことができませんでしたので、大きく迂回する必要がありました。ちなみに、当時のDC10などの主力飛行機の航続距離は6000〜7000kmですが、この北回り航路はおよそ11,000kmあるので途中で給油が必要でした。そこで、アラスカにあるアンカレッジ空港を経由するのが一般的でした。
経由も含めるとヨーロッパへのフライトは20時間以上かかることもあり、非常に遠い世界だったわけです。(詳しくはWIKIトラベル

現在の航空機は14,000km以上の航続距離を持ったものも多くありますので、北回りでも直行が可能です。とはいえ、距離が伸びていますので3〜4時間程度、余計に時間がかかることになります。

少し話がそれてしまいましたが、ウクライナ危機に欧州貨物路線の輸送キャパがさらに3割程度減少してしまいました。その結果、運賃の高騰はもちろんのこと、輸送できず空港で滞留する貨物が山積みになりました。
欧州からの航空便は通関や国内輸送も含めて、通常は1週間以内で到着しますが、場合によっては1ヶ月程度かかることも発生するようになりました。
コストもさらに高騰し、コロナ前(2019年末)と比べると10〜20倍程度になっています。2022年5月現在でもその状況が続いています。

ヨーロッパは遠くなりにけり

SkyScannerで2022/7/1出発便で検索した結果

上記はSkyScannerで東京出発→ミラノ行きを検索した結果です。イルメの本社のあるイタリア・ミラノでは残念ながら直行便がありませんので経由する必要があります。
北回り・南回りではあまり差はありませんが、最短でも19時間前後かかるので移動だけで丸一日が潰れてしまうことになります。
このブログを書いている2022/7/1時点では日本ーヨーロッパの直行便はロンドン・フランクフルト・ヘルシンキだけで、全て東京からになりますので他の地区からの移動はさらに時間がかかることになります。

今後の見通しは?

以前のようなコスト・納期に戻るための条件を考えると、まずは旅客数の回復とそれに応じた便数の増加が必須となります。各国の渡航条件は少しずつ緩和されつつありますが、下記グラフのように2019年のピークまで戻るためには数年以上の時間がかかると思われます。

訪日外国人旅行者数及び出国日本人数の推移
観光庁HPより

さらに、欧州の場合はウクライナ危機が続く限り、迂回ルートを使う必要がありますので、人やモノの往来がしにくい状態が続きます。

そういう意味では、我々欧州企業で働く身としては、物流問題だけでなく現地とのコミュニケーションレベルを下げないように工夫していく必要があります。
今はZOOMなども普及して実務レベルのコミュニケーションでは実害はありませんが、”空気”を感じることができませんし、展示会などを通じて得られる欧州のトレンドなどがすっかり抜け落ちてしまっています。
一日も早く従来どおりの環境が戻ることを祈るばかりです。

今回は航空輸送について解説しましたが、海上輸送や多国間取引、エネルギー等もサプライチェーンの混乱につながっています。次回以降でもう少し深堀りしていきたいと思います。

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